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(…何でかしら?上手いんだけど、どこか…変?) ゼシカは夕食に使うイモの皮を剥きながら、目の前で同じ作業をするククールの様子を見てはそんなことを考えていた。 ククールが一行に合流したのは、つい先日のことだった。 黙々と慣れた手つきでイモの皮を剥いているその姿は、ドニの町での一連のドタバタで抱いた軽薄な第一印象とはいささか違う感じがする。 育ての親だったオディロ院長を失って間もないからだろうか? あるいは「赤の他人」から「仲間」となった自分たちとの接し方を模索中なのだろうか? 「…ん?何か?」 時折向けられるゼシカの視線に気付いたククールは手を休め、その顔を上げた。 「あ…皮剥くの上手いなーって思ってたの。でも…」 その先の「どこか変」という言葉を言っていいものかと躊躇ったゼシカは言葉を飲み込む。 「でも?」 ククールのまっすぐな蒼の瞳に射抜かれたゼシカは、その躊躇いも手伝って反射的に目を逸らし、意図せず自分の手元を見る形となった。 「あっ!」 ゼシカは思わず声をあげ、再びククールを見た。そして自分の手元と見比べる。 「そっか、違和感があるわけよね。左手でナイフ使ってるから」 「ああ、そういうことか」 フッ、と軽く笑った後、ククールはその手のナイフをくるりと回転させた。 「よく言われるよ。「珍しい」とか「変な感じ」とか「器用だ」とか。そう思ったかい?」 ゼシカは「違和感」などと口走ったことを軽卒だったと後悔した。 三つもの具体的な形容を即座に返してきたククール。 その顔に浮かんでいたものは、苦笑。 きっと過去に幾度となく同様の言われ方をしてきたのだろう。 そしてそれは、あまりいい記憶ではないように感じられた。 「身近に左利きの人はいなかったからね。…気に障ったのなら、ごめん」 「別に謝らなくてもいいけど?実際、メタルスライムを見かけるくらいには珍しいんだろうし」 ククールはそう言うと、何事も無かったかのようにイモの皮剥きを再開した。 「ねぇ…左利きで困ったことってある?」 暫しの沈黙の後、ゼシカはククールに問い掛けた。 これといった話題が無いのと興味とが半々の割合、といった感じだろうか。 先程のように、知らずに相手を傷つけかねない状況を少なくしよう、とも思っていた。 好むと好まざるとに関わらず、ククールはこの先しばらくの間は毎日を共に過ごす仲間となったのだから。 「困ったことか。うーん…。草刈りは苦手だったな」 「草刈り?」 どんな話でも予測できるものでは無かっただろうが、そのあまりに意外すぎる答えにゼシカは呆気に取られてしまった。 「草刈り鎌がさ。あれ、左手じゃ使えねえんだ」 草刈り鎌は片刃で、手前やや上方に引くことで作業をする道具だ。 左手で持つと刃が上下逆になり、その結果手前やや下方に引かないと同じ作業はできない、と、ククールは身ぶり手ぶりを交えて説明をした。 「へえぇ。それって右利きだと分からないわね」 「だろ?それで「お前はなんてヘタなんだ」なんて言われた日にゃブチ切れよ?」 ククールのおどけた言い方に、ゼシカは思わず噴き出してしまった。 「あと、タマゴ型のレードルも使い辛いから嫌いだな」 そう言いながら、脇に置いてある鍋に突っ込まれていたレードルを取り出す。 「こういう丸いのならいいんだけど」 ククールはゼシカの目の前でレードルを左右に振り、鍋に戻した。 「剣と弓は、習った時に特に苦労した記憶はないね」 「えっ?そうなの?」 その二つは苦労したのではないか、と考えていたゼシカは驚く。 そして続くククールの言葉に更に驚かされた。 「むしろ他の奴らより楽だったかもな。対面状態だとオレは教官を鏡にできるからさ」 「鏡にできる…って?」 もう何が何だかゼシカには分からなくなってしまっていた。 そんなゼシカの様子を見て取ったククールは、ゼシカと正対する形に向き直って話を続けた。 「ゼシカが生徒でオレが教官だとするだろ?で、オレの動作をそのまま右手で真似してみな」 ククールはそう言うと、ナイフを持った左手を真上に上げた。 「これでいい?」 ゼシカがそれに倣って右手を真上に上げたのを見届け頷いた後、ククールは自らの右手の方向に斜めの線を描くように左手をゆっくりと振り下ろす。 ゼシカはその一瞬後に自分の左手に向かって右手で斜めの線を描いた。 「向かい合って構えを教わる時、相手と利き手が違う場合は今みたいに鏡を見る感覚でできるわけさ」 頭から足先まで、全身を映せるほど大きな鏡をゼシカは見たことがない。 そのような大きさの鏡は造るのが難しいためにとても高価で、一般には出回っていないからだ。 なるほど、相手の動作を真似る場合に、この疑似体験ほど有利な状況はおそらく無いだろう。 「ほんと…今のだと考え方が楽ね」 「だろ?たまには少し得した感じになるんだ」 いつの間にかゼシカは、ククールが次から次へと語る未知の話に夢中になっていた。 「武器の中であれだけはダメだな。ブーメラン」 「どうして?」 ゼシカはエイトの背負っていたブーメランを思い出す。 エイトのブーメランは持ち手側に布だか皮だかが巻かれていたが、左手で使う場合はそれを左右巻き替えればいいのではないか?などと考えていた。 「ブーメランは片側の羽だけ少し削ってるんだ。そうしておかないと投げた時戻ってこない」 「へえぇ。あれって左右同じ形だとばっかり思ってたわ」 「逆側を削って作ればオレでも使えるようになるけど、問題はその先にあるんだ」 ククールは一旦そこで言葉を切り、ゼシカに視線を投げ掛けた。 「どんな問題だか分かるかい?」 「問題……?」 ゼシカはそう呟くと俯き、真剣に考え始める。既にその手は止まっていた。 その様子を見たククールの口許が、ほんの僅かばかり釣り上がる。 (やっぱり。疑問を抱いたら没頭するタイプ…だな) 「どう?分かった?」 ククールは頃合いを見計らってゼシカに答えを促す。 ゼシカは若干の口惜しさが漂う表情を浮かべ、上目遣いでククールを見ながら言った。 「……ヒント、ちょうだい」 「プッ…」 その仕草と発想があまりに可愛らしく思えたククールは、不覚にも噴き出してしまった。 そんなククールを見て、ゼシカは抗議まじりに話を続ける。 「笑わなくてもいいじゃない!ブーメランのこと全然知らなかったんだから」 「悪い悪い。ヒントか。そうだな……」 ククールは暫く考えてからこう言った。 「エイトのブーメランでは簡単に出来て、オレのブーメランではやり辛いことがある。これがヒント」 「うーん……」 ヒントを与えられたゼシカは、ますます深く悩む状態になってしまった。 「なあ、ゼシカ…」 ククールは暫くゼシカの様子を黙って見守っていたが、やがて意を決したように呼び掛けた。 ゼシカはハッとして顔を上げる。 「答えは言わないでおくからさ。とりあえず今はこいつをやっつけようぜ?」 そう言いながらククールは、手にしていた剥きかけのイモを宙に舞わせた。 「あっ!…あはは。そうね、急がないと」 ゼシカは照れ笑いをした後、慌てて皮剥きを再開した。 遅れを取り戻すべく黙々と作業をして食材を入れた鍋を火にかけた後、レードルで鍋の中の灰汁を取り除きながらゼシカはぽつりと呟いた。 「鏡に映したものを取り出せる魔法があったらいいわよね」 「は?」 その突拍子も無いゼシカの発想に、ククールは咄嗟に言葉を返せず呆然としてしまった。 「やだっ!あんたまた笑うわね!?」 ククールの表情を見て、呆れられたかと思ったゼシカは頬を染めて身構える。 しかしククールは呆然としたままゼシカを見つめ続け、ようやく口を開いた。 「いや、そういう言い方されるのは初めてでさ。……驚いてた」 そして微かな笑みをこぼした。 それは苦笑でも失笑でもなく、純粋な微笑みだった。 (そうだな。本当にそんな魔法があるといいよな……) 照れくさくてとても口にすることは出来なかったが、ゼシカのその無邪気な気遣いをククールは心底嬉しく思うのだった。 結局ブーメラン問題は翌日に持ち越され、ゼシカの思考は泥沼化してしまっていた。 一行はアスカンタ城に辿り着いたものの、国中が服喪中であったためにこれといった目新しい情報を得ることができず、その城下で店を物色しながら今後の相談をすることにした。 そんな中、答えは思わぬ形で突如もたらされることとなる。 「あっ!これ欲しいな、やいばのブーメラン。1360ゴールドかぁ…」 エイトは武器屋の前で立ち止まり、背負っていたハイブーメランを店主に見せて話を続ける。 「すいません。これ、いくらで引き取って貰え…」 「あ~~~~~っ!!!」 町中に響き渡ったゼシカの絶叫に、店主とエイトとヤンガスは驚き一斉にゼシカを見た。 三人の視線を浴びたゼシカは両手で自分の口を覆い、真っ赤になりながら謝罪をする。 その様子を後ろで見ていたククールは、堪らずに大笑いを始めた。 事情を知らないエイトとヤンガスは、一体何故笑うのかと目を白黒させる。 逃げるようにしてゼシカは笑い続けるククールの側へと歩み寄り、がっくりと項垂れながら言った。 「……やり辛いことって、下取りだったのね」 ~ 終 ~
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あれから数ヶ月が経った。ゼシカの屋敷にて、エイト、ヤンガス、ククールは夕食に招待された。・・・たまには、みんなで会いたいわ。かつてのトロンデーンでの宴の終わりに、ゼシカが提案したのだ。テーブルに並ぶ豪華な料理とぶどう酒を前に、4人の話は尽きることなく続いた。時間の流れが瞬く間に思えるくらい。エイトは明日の昼まで休みをもらったというので、今夜はリーザスの宿屋にヤンガス、ククールと泊まることにした。ヤンガスは満腹のせいか、そしてエイトは慣れない酒のせいか、宿に着いて間もなく、深く眠ってしまった。ククールは――時の流れの早さを惜しみつつ、ベッドに横たわっていたが、眠りを妨げる想いから少しでも解放されるために、外の空気にあたることにした。涼しげな風に、草木の香りが心地よい。「遅くまでありがとう、おやすみなさい」教会の扉が開いた。そこから漏れる光と、聞き覚えのある声。扉から出てきて奥に向かって会釈する、見慣れた影。やがてククールの存在に気付いたそれは、真っすぐとこちらに近づいてくる。「・・・ククール?」ゼシカが、小さな声で話しかけた。「ゼシカ。こんな時間に教会に?」ククールが聞くと、ゼシカは暗がりの中で微笑し、頷いた。「今日、とても素晴らしい日だったから、神様に感謝してたの」照れ隠しのように、話題を変える。「ククールはどうてここに? 眠れない?」「・・・ああ、ヤンガスの鼾がうるさくてな」いつもと違う、清楚な女性に見えたゼシカへの胸の高鳴りを、必死で隠す。ククールは小川に目をやった。「リーザスは美しいな・・・水の流れに月が映える」ゼシカは、うん、と呟き、微笑んだ。月明かりに照らされ、微笑むゼシカはもっと美しい。言いたかったのを、ククールは飲み込んだ。しばらくの沈黙。水の流れる音だけが聞こえる。「少し、冷えるわね」ゼシカが、屋敷のほうに目をやった。ククールはその視線に気づく。ここで離れたら、しばらく会えないのか?その瞬間にあふれ出す、抑えられない想い――ククールが一歩、前に出た次の瞬間、ゼシカは息を呑んだ。「・・・!」彼女が今いるのは、冷たい夜風の中ではなく、ククールの腕の中。暖かく、広い胸、長い腕に、しっかりと抱きとめられている。ククールは、自分の鼓動がすでに高鳴っているのをゼシカに悟られるのが、少し怖かった。息を吸い込むと、震えるようにゆっくりと吐き出した。「ゼシカ、愛してる」計画していなかった言葉がもれる。「何?、急に」あがらおうと、ゼシカの肩に力が入る。とっさに、ククールは両腕の力を強めた。「愛してる。嘘じゃない」顔を伏せ、ゼシカの額に頬を寄せる。こんなに真っ直ぐに気持ちをぶつけてくるなんて、いつもの饒舌なククールとは違う。それが冗談ではないと察したゼシカは、次第に体の力が抜けていった。思わずして、嘘よ・・・と、心にもない言葉を発する。「俺のほうを見て」ククールが腕の力を緩めた。「・・・・・・」ゼシカは――ゆっくりと、まるで月を見上げるかのように顔をあげ、そして視線をククールの瞳に合わせた。月が、魔法をかけたのか。ククールは、自分を見つめるゼシカが、狂おしい程愛おしく感じた。ゼシカの頬に、ククールの銀色の髪がかかる。互いの唇の温度さえ感じる程の、ごくわずかな距離まで、顔を近づける。その距離のまま、動きを止めたククールの口元が、微かに動いた。(――いい?)ゼシカの耳に届いたその声は、胸をも締め付ける。顔をそむけられなかった。目をそらすこともできなかった。そして――それがゼシカの返事となった。ひとつに重なる、二人の影。月は高く、登っていた。
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129名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/14(金) 18 09 02 ID Cn1nZ+Ej0 トロデの記録のコーナーにククゼシ観察日記が何故ない 130名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/14(金) 23 19 29 ID tQr2nqJV0 「今日もククールの奴め ゼシカにちょっかい出して 燃やされておったぞ 今のあやつらに足りないのは 素直な心 じゃ!」 ↓ 「ゼシカがいなくなってから どうもククールが イラついとるのぉ エイト! 道草ばっかくっとらんで はようゼシカを探しにいかんか!」 ↓ 「最近ゼシカも ククールに対して ようやっと素直になってきたようじゃの 頬を染めたりして 微笑ましいわい 若いもんはいいのぉ」 ↓ 「…。 エイトよ このところククールとゼシカの イチャつきぷりが 目に余ると思わぬか? ククールめ 調子にのりおって! わしのかわいいミーティアに 悪影響じゃ!」 131名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/14(金) 23 46 11 ID 6l59FIaP0 130 あ、このトロデの台詞、ゲームプレイ中に何度か目にした記憶あるわ 確かドルマゲス倒した辺りから急速にククゼシ二人が いい雰囲気になっていった事も指摘してたな、トロデ 133名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/15(土) 01 06 55 ID 3mWNnRP80 どこまでネタなのか分からない流れだw 自分の中ではククゼシ公式モード(フィルター全開)なので プレイ中はありとあらゆるものがククゼシ再生されていました。 公式ガイドブックでいちゃついている二人に対して ヤンガスが「二人とも い つ も 通 り 頼もしいでがすよ」と述べていたし ククゼシはいつもいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃしていた事に間違いなし。 134名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/15(土) 18 10 45 ID 7b4Xhpbu0 130 ワロタww ククゼシの進展具合が分かりやすいw 多分最後の方はトロデも完全に呆れて、 「もうあの2人は好きにさせておけ」状態になるんだろうなw 135それでは自分もwsage2008/11/15(土) 18 40 25 ID W1hQZ1jx0 「ゼシカが 死にやすいのう。 あのスケベ僧侶の 欲望優先で 露出度の高い装備を つけさせるからじゃ。 きちんとした重装備を 買ってやらんか!」 「ククールが 死にやすいのう。 夜は昼間の戦いの疲れを取るもの。 毎晩ゼシカと二人きりで 違う戦闘をしておるからじゃ!」 136名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/15(土) 22 32 33 ID FEE1nqXp0 皆の者、セレクトボタンは常に連打じゃ! 「エイト ゼシカが疲れきっとるぞ! 今夜の宿は スケベ僧侶と 別の部屋にしてやれ!」 「エイト ククールがそろそろ限界のようじゃ 今夜の宿は ゼシカと同じ部屋にしてやれ!」 エイトとトロデは共犯 137名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/15(土) 22 41 37 ID Gl6a2mCt0 130 「道草ばっかくっとらんで はようゼシカを探しにいかんか!」 が、 「薬草ばっかつくっとらんで はようゼシカを探しにいかんか!」 に見えたよ! 138名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/16(日) 00 21 24 ID SoXCjxl30 ちょっと待ってくれw どれが本当の情報なんだw 139名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/16(日) 01 48 11 ID YEFQFlxd0 ククゼシスレ的には充分全部公式 これらの台詞がゲームプレイ中に見覚えがない人は フィルターのかかり方が薄い証拠 もっとどっぷりククゼシフィルターウイルスに感染し発症すべき 141名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/16(日) 17 21 59 ID k+abhGYh0 130-136のトロデの台詞の流れに吹いたww ククールやゼシカの体調をトロデがさり気なく管理しているみたいだw ククゼシをあまり連続で二人部屋にしているとゼシカが疲れ果て 逆に違う部屋にしているとククールがイライラしてくるというのがwww 142名前が無い@ただの名無しのようだsage2008/11/16(日) 22 39 33 ID Xiza1ZNI0 135 違う戦闘ってw 毎朝「ゆうべはお楽しみでしたね」と声をかけられるククゼシカップル…
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「……にが」 一口目の率直な感想をこぼしたゼシカを見て、ククールが微かに笑う。 「これは普通のビールよりキツいからな。ゆっくり飲むといいぜ」 「それにしても、修道院でビールを作っていたなんて知らなかったわ」 「宣伝してるわけじゃないし、今までここにも修道院にも長居はしなかったしな」 特に誰かさんは長居をしたくなかったようだし?と付け加えながら、ククールは意地悪く笑う。 「もぉ!それはククールも同じでしょ?」 「オレは修道院はともかく、ここならいくらでも居られるぜ?」 そう言うククールの表情からは、ベルガラックで見られた蔭はすっかり態を潜めていた。 「修道院で作られてるのはビールだけじゃないんですよ」 そう言いながらマスターは一皿を二人の前に置いた。 「これも修道院から仕入れてるものでしてね。チーズとバター。バターの方は店でレーズンバターにしてるんだけど」 「あー、頼もうと思ってたら先越されちまった」 悔しがるククールに、したり顔のマスターは続けた。 「これは私から奢り。こんなご時世だから、ククールぼっちゃんが素敵なお嬢さんを連れて久々に来てくれたのが嬉しくてね」 マスターの言葉を聞いたゼシカは頬を染め、再びぼっちゃんと呼ばれてしまったククールは思わずむせ返る。 「だ……だいじょぶ?」 「ぼっちゃんは勘弁って、さっき言っただろ……」 息も絶え絶えにマスターに抗議をするククールは、気の毒というよりはどこか滑稽に映る。 そんなククールの様子を見て、ゼシカは遠慮なしに笑う。 「あら、私だってリーザス村やポルトリンクではお嬢様って呼ばれるわ。兄さんだってずっとサーベルトぼっちゃんって呼ばれてたし。そういう場所があるって、いいことだと思うけどな」 「お嬢さんの言う通りだと思うよ。あとは私の口癖だね。今更、ククールさん、とは呼び辛いし」 「分かったよ……。ゼシカにもマスターにも叶わねぇな」 そう言うククールの表情は、苦笑しながらもどことなく心地よさの漂う風情だった。 「そんなことより、な?チーズとレーズンバター」 ククールはどうにも話題を逸らしたいようで、出された皿をつい、とゼシカの方に移動させる。 少し酔いが回ったのか、ゼシカはチーズを口にしながら唐突にクスクスと笑い始めた。 「美味いと笑うのかよ?ゼシカは」 「ううん、そうじゃないけど。あ、マスターご馳走さま。美味しいです」 「どういたしまして。ごゆっくりどうぞ」 笑顔で応じたマスターは、軽く会釈をすると他の客の注文をこなすために二人の前から離れていった。 「チーズを見ると、どうしてもトーポを思い出しちゃって」 「なるほど、そういうことか。ひとかけら持って帰ってやってみるか」 「それ、いいわね。でも食べたら何か吐くかしら?」 何気ないククールの言葉に、ゼシカは楽しげに同意をする。 「マイエラのチーズだからなぁ。……ダジャレを吐いたりしそうだよな」 「やだっ!ほんとにそんな気がしてきたわ」 意図的に真顔になったククールの言葉は、再びゼシカを笑いの渦に巻き込んだ。 二人は杯を重ね、それぞれ程良い心地に酔っていた。 チーズとレーズンバターに代わって、二人の前には皮のまま丸ごとオーブンで焼かれたイモが出されていた。 ゼシカはパリパリになったイモの皮を器用にナイフとフォークを使って剥がし、小さなココット皿に入れられたバターを一口サイズに切り分けたイモの上に乗せる。 「はい、できたわよ」 「サンキュ」 ゼシカが皿をククールの側に置き直すと、ククールは待ってましたとばかりにイモを手元の皿に取り分ける。 ベルガラックでは少ししか食べることがなかったククールは、どうやら今頃になって食欲が出てきたらしい。 ゼシカもその皿からひとかけらのイモを取り分け、口に運ぶ。 「レーズンバターも美味しかったけど、普通のバターも美味しいわね」 「当然だろ?」 そう言いながらにやりと笑うククールは得意げだ。 なんだかんだで自分の出身地のことを褒められるのは、悪い気はしないらしい。 「このバターもチーズもビールも、たまらなく好きなんだよな」 「うん、分かるわ。だってこんなに美味しいんだもの」 ぽつりとこぼされたククールの言葉に、ゼシカはニコニコしながら素直に頷く。 「もちろん美味いってのもあるけどな。同じ理由で酒場も好きなんだ」 「酒場って、ここだけじゃなくて?」 「そ。マスターも、そこで働く女の子も、全部ひっくるめてな」 そこで働く女の子、という言葉が少々引っかかったが、ククールの口調からは真面目な雰囲気が漂っていたので、ゼシカはそのまま話を聞くことにした。 「酒場ってところはさ。貧乏人でも金持ちでも、同じ金を払えば同じ分だけ満たされることができる場所だと思ってる。だからオレは、そこで働く人たちが好きなんだ」 滔々と語るククールを見て、ゼシカは目から鱗が落ちる思いがした。 今まで、ククールは単に酔っぱらいながら女の子と戯れているだけだと思っていたからだ。 過去に何度となくククールがこぼしていた、教会は金持ちしか救わないという批判と、修道院時代に自らに課せられたという、金持ちから寄付金を集めて廻る日々の話。 生きるために取らざるを得なかった自らの行動に疑問を抱きながら、ククールが自身の安息を求め行き着いた場所が、教会とは対極にある酒場だったのだろう。 「バターもチーズも、それと同じなの?」 「ああ、大雑把なイメージはな。そのまま食べても料理やお菓子に使っても、誰が食べても美味いだろ?」 「うん、そうね」 「美味いものを食べると、大人も子供も、誰でも幸せな気分になれるからな」 「あ!!そうよね。それってステキなことね……」 ゼシカはククールをまじまじと見つめながら思う。 この派手で気障な外見からは想像もつかないが、ククールには聖職者たりうる素質が十二分にあったのだと。 そしてその思想と解釈は、世にいる数多の聖職者の中で誰よりも純粋で、それでいて柔軟で、きっとどんな人の心をも満たすことができるのだろう、と。 もっとも、当のククール自身はそれに気付いていないような気もしたのだが。 「ん?オレの顔に何か付いてるか?」 視線に気付いたククールがゼシカに問う。 「別に何も?しいて言えば、口許にビールの泡がほんのちょっとかな」 微笑みながらそう言うゼシカの心もまた、気付かぬうちに満たされているのだった。 「……正直、院長が替わってからは、この味も変わっちまったんじゃないかって心配してたんだが。変わってなくて安心したぜ」 何杯目かのグラスを空にしたククールは、ふぅ、と息をつきながら呟く。 「この味が変わったら、うちの店は多分商売あがったりになっちゃうわよ」 カウンター奥の厨房から二人の前に小瓶を持ったバニーが現れ、ククールの言葉に相槌を打つ。 「はい、お待たせしました、ゼシカさん」 「ありがとう」 ゼシカは礼を言うと、小瓶を預けたときに相談していたらしい対価をバニーに渡し、嬉しそうに小瓶を受け取った。 「これで明日の朝は美味しいお茶が飲めるわ」 そう言いながらゼシカは席を立った。 ククールの気持ちもある程度は和らいだであろうし、明日決戦になるかは分からなかったが、それに臨む態勢は整えておかなければならないからだ。 見るとククールは若干名残惜しそうにしていたが、やがてマスターに勘定を頼むとゼシカに続いて席を立つ。 「また来てね、ゼシカさん、ククール」 「ああ。終末半額フェアーが終わったらな」 「うふふ、終わるといいんだけどね」 二人にかかるその言葉の重さを知る由もないバニーは、いつものように妖艶に微笑んだ。 酒場を後にした二人を、火照った身体にちょうど心地のよい夜風が包む。 「涼しくて気持ちいいわね」 ゼシカは一足先に階段を下りると、そう言って伸びをした。 「ね、ククール、少し……」 散歩してから帰ろうか、と、振り向きながら言おうとしたゼシカの言葉は、思わぬククールの行動に遮られてしまった。 ククールが片腕をゼシカの肩に回し、反対側の肩に顎を乗せる状態でその身体を預けてきたのだ。 ちょうどゼシカがククールに肩を貸しているような体勢になってしまっている。 「なっ……ちょ、ちょっとククール!どうしたのよ?」 振り向くことの叶わなかったゼシカは、その視線だけをククールの方に向けた。 顔をそちらに向けることも出来ただろうが、ゼシカにはどうしてもそれが出来なかったのだ。 「もしかして、酔っ払いすぎちゃった……とか?」 今しがた夜風で冷まされたはずの身体が酔い以外の何かで再び火照るのを感じながら、ゼシカは辛うじて言葉を絞り出した。 「ああ……恥ずかしながらな。座ってる時はさほどでもなかったんだが」 ククールはそう言うと顔をゼシカとは反対側に向けてから大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。 その動作の一部始終を背中で感じることは、ゼシカには刺激が強すぎた。 このような状態になった酔っ払いを介抱した経験がないことも相俟って、ゼシカはどうすれば良いか分からないままにククールの様子を観察する。 やがてククールはゆっくりと顔をゼシカの側に向けると、空いた側の手で前方を指差しながらこう言った。 「今はルーラできそうもねぇや。わりぃけど、宿屋で少し休ませてくれないか?」 ククールに他意は無かった。 以前に酔った状態でルーラを唱えて失敗したことを思い出し、万が一にもゼシカに怪我をさせるわけにはいかない、と、強烈な睡魔に襲われる中でただそれだけを考えての提案だったのだ。 しかし、そんなことを耳元で吐息混じりに言われたゼシカはたまったものではない。 一瞬にして頭の中が真っ白になってしまった。 宿屋で休む、ということは、つまりいわゆる……。 ククールに寄り掛かられ固まったままの姿勢でゼシカは頭の中の真っ白な霧を必死に振り払い、もの凄い勢いであれこれと考えを巡らせる。 酔った勢いで云々……という定番の話は耳にしたことがある。 もしやククールのこの行動は、自分を誘うための手の込んだ演技ではなかろうか? しかし純粋に辛そうにも見受けられるので、この懸念は取り越し苦労かもしれない。 ここまで酔った姿は見たことがないし、大体ククールはいつも何かにつけては口説き文句を口走るので、たとえしらふだったとしてもその正否を見極めること自体が難しい。 今の状態でベッドに放り込めばそのまま寝てしまうかもしれない。 しかし仮に寝たとしても、回復までに一体どのくらいの時間がかかるのかが全く判らない。 起こすタイミングなど皆目見当もつかないし、起きるまで待っていて朝になってしまうのもよろしくない。 それでは自分も休めないし、何より他の仲間たちに朝帰りと思われてしまうことが問題だ。 はっきり言ってそれは嫌すぎる。 「なぁゼシカ、宿屋に……」 固まったままのゼシカの耳元で再度ククールが囁いたのと時を同じくして。 (「メラはだめだよ。ラリホーあたりにしといて」) というエイトの言葉がゼシカの脳裏をよぎり、次の瞬間ゼシカはククールの言葉をかき消すようにラリホーを唱えてしまっていた。 本来味方には効かないとされる呪文だったが、ククールが酔っているせいか、あるいはゼシカの精神力の賜物か、あっさりとククールはその術中に陥った。 (ごめん、ククール。今は……今はやっぱりこうするのが一番いいと思ったの……) 心の中でククールに詫び、その吐息が寝息に変わったことが耳で認められたことでゼシカの緊張もようやく解け、ククールの方を見ることができた。 初めて至近で目の当たりにするククールの安らかな寝顔はまるで天使のようで、起きている時とのあまりのギャップに思わず笑いがこぼれてしまう。 (それなりに楽しんで貰えたようだし、まぁ、これで一応は作戦成功……よね) ゼシカは暫しの間ククールの寝顔を堪能すると、その胸中に安堵と微かな名残惜しさを覚えつつ、腰のポーチからキメラの翼を取り出して満天の星空の中に投じた。 ~ 終 ~ so sweet…前編
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魔法の鏡に魔力を宿す方法を求めて船で各地を巡り、一行が偶然足を踏み入れた洞窟。 そこで何気なく探索を始めたのが間違いだった。 いや、何気なくではない。確固たる理由があった。 船から降り立った時、目の届く範囲に樽があったからだ。 冒険者の性癖というやつで、未知の場所で樽や壷を見ると投げ割りたくなる衝動はどうにも抑え難い。 好奇心が身を滅ぼすとは、よく言ったものだ。 そこに出現した魔物は、圧倒的な強さで仲間たちを蹂躙した。 先手を取られ、繰り出された連続攻撃は何度撃ち込まれたかも今となっては定かではない。 懸命の回復もまるで追い付かず、一人、また一人と斃され、あっという間にククール唯一人となってしまった。 もう一度撃ち込まれたら確実に自分も後を追うことになるだろう。 口惜しいが、自分の技量では目の前の脅威を退けることなど到底不可能だ。 ならば、取るべき手段はひとつ……。 万にひとつの望みを賭けた、格上の敵からの逃走が成功した。 辺りを見回し魔物を振り切ったことを確認すると、ククールは乱れた息を整え呟いた。 「ふう。ククール様一世一代の大博打、成功…っと」 いつもの癖でこんな時でも軽口めいた言い回しだったが、それに応える声は今は無い。 ククールは斃れた仲間たちの元で簡易結界を張った。とりあえずこれで魔物の襲撃は回避することができる。 しかし、少しでも移動すればこの結界は解けてしまう。 折角逃げおおせたのだ。ここは歩く以外の方法での脱出を模索するのが賢明というものだろう。 ルーラには同等の効果があるキメラの翼というアイテムがある一方で、リレミトにはそれが無い。 ククールはその理不尽さに不満を抱きつつ、自らの負った傷はそのままの状態で横たわるゼシカに対してザオラルを唱えた。 「……しくじったか」 ゼシカは微動だにしなかった。 もう一度。 しかし、またしても望む効果は得られなかった。 ザオラルは被術者との相性も成功率に関係するのだろうか? ならば……、と、リレミトを習得しているもう一人であるエイトに対して唱えてみたが、こちらも失敗する。 その後もククールはゼシカとエイトに対して交互にザオラルを唱え続けたが、遂に一度も成功することなく魔力が尽きてしまった。 「逃げた時に運を使い果たしたってか?ったく、冗談じゃねえぜ」 ククールは舌打ちをしてその場に腰を下ろした。 魔法の聖水はあっただろうか?と、道具袋を確認してみたが、雑多なものが多すぎてなかなかそれらしいものは見当たらない。 そんな状態で道具袋と格闘しているうちに、ククールはサザンビークでエイトが買っていた珍しいアイテムのことをふと思い出した。 それは、世界樹の葉。 とても貴重な物で、使うとザオリクの効果があるという。 「前衛が持ってても倒れちゃったら意味が無いから、ゼシカかククールが持っててくれるかな?」 「ああ、オレはザオラルがあるから、ゼシカ頼むわ」 そんなやり取りをしてゼシカに預けられたはずだった。 「悪いなゼシカ、ちょっと荷物を見させて貰うぜ」 もの言わぬゼシカに向かって律義に断りを入れてから、ククールはゼシカの荷物を調べ始めた。 ほどなくして世界樹の葉は見つかったが、それを手にしたククールは新たな問題に直面する。 サザンビークでゼシカに世界樹の葉を預けることにした後、売り子から説明を受けているゼシカたちから少し離れて、ククールは売店の近くを通りかかった踊り子に視線を投げ掛けたりしていたのだ。 つまりはこういう事である。 「……使い方分からねぇ」 しかし、いくら考えても分からないものは分からない。 正しい使い方が煎じるにしろ練るにしろ、葉そのものを余すところ無く服用すれば恐らくは効果が得られるだろう。 「ま、サラダの野菜だと思えばいいだろ」 そんな訳の分からない理論を振りかざし、ククールは今一度世界樹の葉を見た。 さて。どうやって口にさせる? 「手っ取り早い方法はこれだよな」 ククールは手袋を外し、膝の上にハンカチを広げると世界樹の葉を可能な限り細かく千切り始める。 やがてこんもりとした薬味の山が出来た。しばらくそれを眺めたククールは、ハンカチを地面に置き直すと山を三等分にした。 ククールはその山の三分の一をこぼさないように注意しながら口に含み、小脇から水筒を取り出し、栓を外して水を口に含んだ。 そしてエイトには目もくれずにゼシカを抱き起こし、首の後ろに手をあてがって頭を仰け反らせる。 しかし思ったほど口が開かなかったので、空いているもう片方の手をゼシカの唇にあてがい、ちょうど良い加減に口を開かせてからゆっくりと慎重に唇を重ねた。 残りの二山も同様にしてゼシカに飲み込ませ、失敗なく作業を終えられたことにククールは安堵した。 あとは効果が現れるのを待つだけだ。 ククールは未だ昏睡状態のゼシカを抱き直して仰け反らせていた頭を立て直し、口角に残っていた水滴を指で拭おうとした。 が、頬のところでその手は止まり、頬から耳にかけてを愛おしむように包み込む形に変わる。 (……このくらいは、いいだろう?) ククールは唇を寄せてその水滴を吸い取ると、続けてほんの少しの間だけ再び唇を重ねた。 世界樹の葉の効果はその後すぐに現れ、ゼシカは意識を取り戻した。 「私、やられちゃってたのね……」 ゼシカは起き上がって辺りを見回し、傍らに斃れたままのエイトとヤンガスの姿を認め眉をひそめる。 「でもあの魔物の群れからは逃げられたのね。凄いわ」 「ああ。なんたってオレには幸運の女神がついてるからな」 ククールはそう言ってにやりと笑った。 「でもMPが尽きちまってたもんで、悪いとは思ったがゼシカの荷物から世界樹の葉を出させてもらって使ったぜ」 「悪いだなんて…。いいわよ緊急事態だったんだから」 ゼシカは傷だらけのククールを見て、改めてよく助かったものだと感心していた。 「で、話は後だ。とりあえずリレミト頼む。ここはヤバすぎるし、こいつらも早く蘇生しないと」 「分かったわ。ククールの怪我も治さない……と…!?」 ゼシカはククールの顔を見た途端に目を見開いて絶句し、真っ赤になるとくるりと背を向けてしまった。 「ん?オレの顔に何か付いてたか?」 (つ…付いてるも何も………口許に……緑……葉っぱのかけら……!!) 背を向けて小刻みに震えるゼシカの様子を案じてククールは呼び掛けた。 「どうしたゼシカ?大丈夫か?」 その震える肩に手をかけると、ゼシカは雷に打たれたように跳ね上がった。 「なっ、何でもないわ!何でもないの!!リレミト!!!」 ~ 終 ~
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「あ…ククール…だめだってばぁ……」 「なーんで?オレのこと…嫌いか?」 「違うよぉ…でも……誰かに見られちゃうよぉ……」 メタル狩りが終わって宿屋に移動中のゼシカは急に隣を歩くククールに町の城壁に押し付けられた。そしてククール の手はゼシカの服の中へと入れられ胸を弄っている。ゼシカも急な事でわけもわからずククールにされるが ままになっていた。 「やあぁ…ククール……後で…宿屋に着いてからじゃだめなのぉ?…ああ…っん…」 「ダメー。」 ククールはゼシカの天使のローブの裾を捲り上げた。冒険用のベージュのブラが露になる。 「やっぱゼシカはピンクの方が似合うぜ。この色は似合わないかもな。」 「だめだよぉ…見られちゃう……」 「大丈夫だって…オレが隠しといてやるから…」 ククールはブラを上にずらすと露になったゼシカの胸にしゃぶりついた。もう片方の胸もククールは手のひら 全体で隠すように揉みあげる。 「っぁん…だめ…やだぁ……あん…」 「はは、ゼシカの乳首おっきくなってるぜ?感じてるんだろ?」 「…っん……だって…ククールが…やぁん……」 ククールは乳首に舌を這わしたままゼシカのローブの中に手を入れた。そのまま太股を伝い這い上がって いく。 「ゼシカ…大きい声出すなよ。」 「だったらこんなとこで…あんっ」 ククールの指がゼシカのショーツの上からアソコに触れた。割れ目の間をショーツの上から激しく擦って 刺激を与える。薄っすらとショーツが湿り気を帯びてきた。 「っあん……やだぁ…ああん…ククール…だめ…やぁっ…はあん……」 「本当に嫌か?結構気持ちよさそうになってるんだけど。」 ククールの手がゼシカのショーツの端を掴んで膝まで引きずり降ろした。そして愛液が溢れだしているアソコ に指をあてるとゆっくりと擦りはじめた。 「あん……だめだよぉ…っん…いやぁ……ああんっ……」 ククールの肩をつかんで押し寄せる快感に浸るゼシカ。目がとろ~んとしてきて呼吸も荒くなってきている。 ククールは指を愛液で濡らすとアソコにあてがってからゆっくりと挿入した。 「…っんん…あ……っん……やぁ……」 「ゼシカ…声出してもいいぜ…」 「…あん……人がきちゃう…っん…もん……っゃん…」 指を締めつけるゼシカの膣内をククールは激しく突き上げた。その刺激でゼシカの身体が壁際で反り返る。 クチュックチュッっという愛液が指と絡む卑猥な音と共にククールの手が溢れだす愛液でぐちょぐちょに なってきた。 「ククール…装備汚れちゃうよぉ…あんっ…やあぁぁ……」 「そっか…まだ冒険用の装備なんだよな…。」 ククールはゼシカの胸から口を離すと身を屈めて天使のローブの中を確認した。もうアソコから太股にかけては 愛液でビショビショになっているが天使のローブは裾の方が少し濡れているがそれほど目立つ程で はない。 「大丈夫みたいだな。あいつとヤンガスが戻る前に…」 ククールはローブの中に手を入れるとたっぷりと濡れたアソコに指を挿入した。 「ああ…っん……ククール…っん…こんなとこじゃやだぁ……あん…」 「ゼシカこんなに濡れてるのに嫌なのか?うそついちゃだめだ。」 ククールは壁に手をつくと激しくゼシカの膣内を突き上げた。誰も居ない路地の片隅にククールの指とゼシカの愛液が 絡む音が響き渡る。 「あ、ああん…ククール…あ…ん……やあ…」 人に見られるかもしれないという恐怖と興奮からゼシカは早くも達しそうになってきた。自然と自ら 腰を動かし快感を求めだした。 「ああん…もうイっちゃうよぉ…やああん…っあん…あん…あん…」 「ゼシカ…可愛いぜ…」 ククールが更に指の動きを早めると同時にゼシカはククールにギュッと抱きついた。 「やあ…もう…イクぅ…ああん…イクのぉ…やあぁ……ああん…っん!」 ククールはゼシカの膣内からドロッと温かい粘液が溢れ出すのを感じた。急いでローブの中に頭を入れて アソコから溢れている愛液を舌で舐め取った。 「んー…ちょっと汚れたかな…」 「ククール…どうしてこんなことするのぉ…?」 急に町中で犯されわけのわからないゼシカは再び立ち上がったククールに問い掛けた。まだククールの口 の周りにはゼシカの愛液がついてイヤラシク濡れている。 「ねえ…ククールってばぁ…。そうしてこんなことしたのぉ?」 ククールは今までとまるで違う笑顔でゼシカを見た。 「あ?冗談だって!ゼシカびっくりしたか?」 「え?冗談だったのぉ?」 「当たり前だろ、こんなとこで本気でするわけないじゃん!」 「なぁんだぁ、冗談かぁ。あたしびっくりしちゃったぁ。」 「ゼシカ早く行かないとあいつとヤンガス待ってるぜ、きっと。」 「うん!今いくぅ!」 すでに先を歩き出しているククールのもとにゼシカは嬉しそうに駆けていった。 (もう…ククールってばびっくりしちゃったよぉ…。でも…装備どうしよぉ…)
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ククールに質問 Q「ククールさんはゼシカさんのこと好きなんですか?」 A「はっ?誰があんなじゃじゃ馬。オレはもっとおしとやかで守りがいのある女の子が好みなもんでね。 まぁ、いい女ってのは認めるよ。あの顔にあのボディ、闘わせれば武器は使いこなすわ魔法は強いわ、 頭はいいし品もある。…そのわりに常識ねぇっつーか世間知らずつーか無防備つーか 言ってることとやってることに差がありすぎるっていうか 身体は一人前どころか十人前くらいのくせして頭はお子チャマっつーか このオレが何度襲うぞゴルァってなったかわかってんのかイヤぜってぇわかってねぇんだろうけど とにかく危なっかしくて放っとけねぇんだよ全く」 Q「…………好きじゃないんですよね?」 A「だからそう言ってんだろ」 ゼシカに質問 Q「ゼシカさんはククールさんのこと好きなんですか?」 A「はぁっ!?冗談よしてよッ誰があんなケーハク男!!私はもっと誠実で真面目な人が好みなの!! ……………ま、カッコイイってのは認めるわ。顔はね。背だって高くてスタイルもいいし、 サラサラの銀髪も素敵だし。レイピア使わせると達人だし弓も得意だし魔法まで強いしね。 ……………………で、も!その全てを鼻にかけて遊び歩いてるところが許せないのよ!! いつでもどこでも女の子女の子って、デレデレしちゃってホンット不真面目なんだから…! ……私にだってそうよ、何かと護ってくれたり気を使ってくれたりやたらに女の子扱いして…… …何よ、下心見え見えのくせに。どうせ胸しか見てないくせにッ。どうせ本気じゃないくせにッッ!! ククールのバカーーーッッ!!!!!!」 Q「好きなんですか?」 A「あんなヤツだいッッッッッキライよ!!!!!!!!!!!!」
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フィンマククール(フィン・マク・クール) フィンマックールの別名。
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みんなで大盛り上がりのトランプ。負けたら罰ゲーム。このあとの買い出しで荷物持ち。珍しく、あのククールが負けた。本人は肩をすくめて、「こういう日もあるさ」と気取っていたけれど。 **「買い出しってお前ら、なんで今日に限って道具も装備も食い物もいっしょくたにすんだよ!」「だってこの街なんでも揃ってて便利だし」「他意はないでげすよ」「ハイ文句言わない。これもよろしくね、荷物持ちさん」両手に大きな紙袋を3つも抱えたククールの非難に、手ブラの3人はおかしそうに笑った。さらにゼシカが差し出した小さめの袋に、ククールはうんざりと眉をひそめる。「いやゼシカさんこれ以上無理だから。…って無理やり乗せるなよ!こら!」「うるさいわね、男なんだからそれくらいしっかり持ちなさいよ。それとも色男は力仕事が苦手だとか言うつもり?」「別に重いなんて言ってねぇだろ、これくらい余裕だっつーの。ただ…」「あら、じゃあまだ買い物しても大丈夫よね?エイト、角のお店に寄ってくれる?見たい洋服があるの」「ちょ、お前なぁ!」いつも通りのやり取りに笑いながら、仲間たちは普段よりも明らかに多めの買い物をした。途中からはゼシカがククールを引き連れてあちこちで買い物をしている間、エイトとヤンガスは喫茶店で休んでいたりしたのだが。日も暮れかけた帰り道。ククールの腕にはさっきよりもさらに幾つかの紙袋がかけられ、抱えた袋も嵩を増していた。少し先の前方に、エイトとヤンガスの後ろ姿がある。ククールとゼシカは夕焼けに照らされる街中を、並んでのんびり歩いていた。「……あ、ククール、ちょっとしゃがんで」ゼシカがそう言ってククールの服の裾を引っ張り、ククールは立ち止まってゼシカの方に重心を傾けた。彼が腕に抱えた紙袋のうちの一つを、ゼシカは背伸びしながらのぞき込み、手を突っ込む。袋の中から探し出したのは、開け口をきゅっとリボンでしばってある可愛らしい包み。「なんだそれ」「お菓子の詰め合わせ」嬉しそうなゼシカの返事に、うぇ、とククールが不満の呻きをもらす。「お前…人に荷物持たせるのにそんないらねーもんまで買ってんなよ…」「こんなの全然たいした重さじゃないでしょ。それにいらなくないもん」「いらねーよ。そういうのを無駄買いって言うの」「いるの。なによ、じゃあククールにはあげない」「あーごめんなさいすみません、やっぱりいります無駄じゃないです甘いもの」その調子の良さに呆れながらも、パクリとお菓子を食べながらゼシカが尋ねる。「何がいいの?キャンディ?クッキー?チョコ?」「ん~チョコ」「はい」少ししゃがんで首を突き出すククールの口の中に、ゼシカはチョコレートを入れてあげる。もぐもぐと咀嚼して、は~、と息。「うめ。やっぱこんな大荷物持たされて疲れてたんだなオレ。かわいそう」「勝負に負けた人が何言ったってはじまらないわよ」そっけないことを言いながらもゼシカは楽しげに笑って、大きなクッキーを半分に割り、ククールの口に突っ込んだ。そしてもう半分を自分で食べる。「おいしー」幸せそうに両頬を抑えるゼシカを見て、ククールも微笑んでしまう。「そりゃよかった」「次は何がいい?」「オレはもういいや。ゼシカ好きなだけ食べろよ」「えっ、これだけでいいの?もういらないの?」「甘いものは今ので十分」「男の人って信じらんない…」「常に甘いもん持ち歩いてる女の子の方がオレからするとよくわかんねぇけどなぁ…」ゼシカのウェストポーチの中に、常にチョコや飴が入っていることをククールは知っている。ぶつぶつと何か言いながらキャンディを口に入れるゼシカに、「甘いものはいいけど、なんかしょっぱいもの、買ってない?」「しょっぱい?フライドポテトは?ヤンガスが買ってたと思うけど」「なんでもいい」再び袋を探って目的のものを探し出すと、ゼシカはポテトの箱を持って、その一本をククールの口に運んだ。ゼシカが口元に近付けるたびに、あーと口を開いてそれを食べるククール。「飲み物ある?」「お水なら」荷物を両手いっぱいに抱えた彼に、食べ物を食べさせてあげる彼女。その光景が道行く人々の目にどう映っているかなんて、本人たちにはどうでもいいことだ。水筒のコップに水を注いで飲ませ、ポテトと言われればそれを食べさせる。しばらくそれを繰り返し、ゼシカは はた、と気付く。「…なんだかアンタ、いいご身分になってない?」「仕方ねぇだろ、両手ふさがってんだから」それはそうだけど、とゼシカは口唇をとがらす。ククールの罰ゲームなのに、これじゃまるで。「…私がククールのために奉仕してるみたいじゃない」ゼシカがふてくされて睨むと、ククールは最高の笑みでにっこり笑った。「わたくしはお嬢様の大切なお荷物をお預かりしている身ですので、それは大きな誤解というものです」「だったら自分で食べなさいよっ」「こんだけ荷物持たせといてどの口が言うかなーそんなこと」うぐう、と言葉を詰まらせるゼシカが可愛くて、ククールは笑いが抑えきれない。「あーうまかった。ごっそさん」「まったく夕飯前なのにあんなに食べちゃって…。お腹ふくれない?」「全然?むしろデザートとか欲しい気分」「…ほんと信じらんない」「なぁ、さっきのお菓子くれよ」「ダーメ。これからご飯食べるんだから、我慢しなさい」「菓子の一つや二つで腹なんかふくれねぇって」「ダメ」問答を続けるが、こうなった時のゼシカは断固としてククールのわがままを通さない。そこらへんの「しつけ」に関しては厳しいゼシカだが、いい年した大人の彼が甘いものをねだってブツクサと文句を言う様がなんだか無性におかしくて、思わず口元がゆるむ。「…ったくよー。ゼシカって時々、変に意固地っつーか態度デカイっつーか…」「はいはい。そんなに言うなら一つだけ、あげてもいいわよ」わざとらしくため息をついてゼシカが譲歩する。「え、マジで?珍しい」「そうよ。特別なんだから、ちゃんと味わって食べなさい」ゼシカが包みの中から取り出したお菓子の一つを手に取る。ククールは愛想よく返事をしながら、今まで通り、ゼシカの方に身をかがめた。抱えた荷物がこぼれそうだ。「もっと、しゃがんで」「もっとって、これ以上は…わっ」いきなり強引にマントの裾を引っ張られ、ククールの体が思い切りゼシカの方にかたむく。荷物が落ちる―――、咄嗟にそう考えたのと、同時。ククールの頬に、ゼシカの口唇がふわりと触れた。ドサドサドサッ。大きな荷物が音を立てて地面に落ちる間、ククールは石のように硬直していた。そして、素早く離れたゼシカが数歩先まで走って、ふいに振り返り、「――――間食もほどほどにしなさいよね!」そう叫んだのを聞いた時も、まだ硬直していた。彼女の姿が先を歩くエイト達に追いつき、さらにその道の向こうに姿を消してから。ようやくククールは口元を手で覆い、ゆっくりと天を仰いだ。「……………………間食なんかじゃねぇよ」地面に転がる荷物の存在に気付き、それを拾うため怠惰にしゃがみこむ。上の空でそれらを拾っていると、さっきゼシカが手に持っていたチョコレートが、まぎれて落ちていた。それを拾って、包みを開いて、口に入れる。甘い、とククールは呟いて、小さく笑った。そっと頬を撫でながら。それはチョコレートより、キャンディより、何よりも甘い。この世で一番甘いもの。2人の頬が赤く見えるのは、夕焼けのせいだけじゃ、きっとない。 **
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ベルガラックでの、ある暑い夜。 今日は戦闘がまるで無かったせいか、ゼシカは寝付けずにいた。 エイトとヤンガスはもう寝息を立てているようだ。 そしてククールのベッドはーーー今日も空だった。ククールは、滅多に自分のベッドで休まない。 行く先々で女の子に袖を引かれているから、その中から見繕ったコとそのコのベッドで楽しんでいるのかも知れない。 ーーー『オンナノコト・タノシム』 ゼシカは自分の考えに嫌悪して眉をひそめた。 『オタノシミ』というのがどういう事なのかは、ゼシカも知識としては知っていた。 若い健康な男が生理的にそれを必要とする理屈もなんとなくわかっている。 それでも、旅の中で自分をエスコートしてくれるその手が、どこの誰とも知らない、行きずりの女のからだに絡み付いていると思うと、喉に詰め物をされたかの様に息苦しくなる。 最近では町で寝具が整った宿に泊まるより、野宿のほうが気が休まるくらいだ。外には魔物はいるが女はいない。 『あーもう!何考えてるのよ。私は!』 ーーーこんなにもいらつくのは暑さのせい。胸がざわざわするのも、なんだか悲しい気がするのも、この暑さのせい。 なんとか寝直そうと頑張ってみるが、目は冴える一方だ。 『ーーー酒場にでも行ってるのかも・・・。』酒場はこの建物のすぐ下だ。 『ちょっとだけ見てこよう。』 ゼシカはベッドから降りた。 明るいピアノ曲と人のざわめき。 ククールはカウンター席にいた。右隣に座るバニーガールがしなだれかかるように誘い文句を囁いてくる。 ククールはそれに曖昧に答えながら酒を飲んでいた。 「ねぇ、私の部屋に行こうよ。」 「ダメ~」 「なんでよ~。ククールからお金取ったりしないわよぉ?」 「そういう事じゃなくてさ」 今日はずっとこのやりとりだ。面倒くさい。かったるい。今日は暑くて・・・いつものサービス精神は湧いて来ない。 ククールが河岸を変えようかと思い始めた時、背後で聞き慣れた声がした。 「マスター、お酒ちょーだい。隣の紳士と同じやつ。」 驚いてを振り向くと取り澄ました顔のゼシカが頬骨をついてこちらを見ていた。 「ゼシカ・・・なにしてんだよ。」 「お酒飲みにきたのよ。」 「ばっか・・・お前、女の子がこんな時間に一人でウロウロしてんじゃないよ。」 「そうね、ククールが居てくれて丁度良かったわ」 ゼシカは悪怯れずに笑って見せた。 ククールは脱力し、大きなため息をついた。目を見ればわかる。ゼシカはご機嫌が悪いらしい。 「お前いつも酒なんて飲まねーじゃ・・・」 「おまちどうさま」 マスターがカウンターにカクテルを置く。 「ありがとう」 ゼシカはそれを一口啜り、甘くて美味しいわ、と全て飲み干した。 「・・・ねェ、ククール・・・そのコなんなの?」 忘れられたバニーガールが存在を主張しはじめる。 「なに?オンナ付きだったの?早く言いなさいよ。こっちだって仕事あるってのに!時間、無駄にしちゃったじゃない―――バカにすんじゃないわよ!」 一瞬にしてククールの眼中から除外されてしまった事を悟ったバニーガールは、一気にまくしたて立ち上がった。 「振られちまったじゃねーか。」 足早に去って行くバニーガールを眺めながらククールがつぶやいた。 「ごめェん」 少しももすまなそうでないゼシカの前に、新しいグラスが置かれた。ゼシカはかなり赤くなって、手元も呂律も怪しくなっている。 「・・・マスター、このオンナ、何杯飲んだ・・・?」 ニヤつくマスターを睨み付け、ククールはこめかみに指をあて何度目か分からないため息をついた。 「ククールはぁ、みんなと・・・一緒にいるの、嫌い・・・なのぉ?」 「そんな事ないさ」 「じゃーあー・・・なんで・・・ククールは夜になると、そ・・・と・・・外に・・・出ちゃうのよ。じ・・・自分だけは・・心配されない・・とでも思ってンの?」 「・・・・・」 ゼシカの物言いはストレートだ。 「・・・お前酔ってるだろ。もう部屋に帰ろう。」 ゼシカの腕を掴み、立ち上がろうとすると、その手を振り払われた。 「それで・・・?ククールはさっきのバニーさんの部屋に行くわけ?」 ゼシカは気分が悪くなったのか、カウンターにうつぶせてしまった。ククールがもう一度その手を掴む。 「ククールはそんなんでいいわけ・・・?相手は誰でもいいの・・・?愛し愛される人は・・・いらないの・・・?―――メチャクチャ寂しがりやの癖に・・・!」 思わずカッとなり、ゼシカの腕を掴む手に力が入る。 ゼシカの恐い所はこういうところだ。感情に火をつけられる。ポーカーフェイスを崩される。 「好きなコがかわいーカオして寝てるのに、隣でグースカ寝れる程,出来た人間じゃないんだよ!オレは!!」 むかついた。お前は無神経だ。バカゼシカーーー言葉が止まらなくなる。 「いつか、きっと、どうにかしちゃうぜ?ゼシカの事。」 そこまで言うと突っ伏したゼシカから、すーすーと寝息が聞こえてきた。 「・・・ったく。最後まで聞けよ・・・。」 「お客さんお熱いですね。」ニヤニヤとマスターが笑った。 「いいなあ。こんな可愛いお嬢さんと・・・。」 ククールはマスターをバカヤローと心中で罵り、ゼシカを抱き抱えて店を出た。 無題10-後編-